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地政学者 アレクサンドル・ゲレヴィチ・ドゥーギンとは?

「プーチンのブレーン」、「プーチンのラスプーチン」と呼ばれ、プーチンの思想的支柱となっている哲学者が話題となっているようです。
この人間の思想を知れば、今後のロシアの動きが分かるかも?

アレクサンドル・ゲレヴィチ・ドゥーギン

(ロシア語: Александр Гельевич Дугин, ロシア語ラテン翻字: Aleksandr Gel’evich Dugin, 1962年1月7日 – )はソビエト連邦(現・ロシア連邦)モスクワ出身の政治活動家、地政学者、政治思想家、哲学者。2008年から2014年までモスクワ大学で教授を務めた。
クレムリンに影響力を持つ存在とされ、レフ・グミリョフに始まるネオ・ユーラシア主義の代表的な思想家の一人。

モスクワ大学で教授を務める人物で、
意識高い系ニュースサイト「Big Think」によると、ドゥーギンは、地政学的な見地から、ロシアを中心とした「新ユーラシア主義」を提唱し、米国や西欧を中心とした「大西洋主義」に対抗すべきだと主張しているという。
これには地政学だけでなく思想的な意味合いもあり、ドゥーギンは主要な政治理論を「自由主義」「共産主義」「ファシズム」の3つと定め、米国は自由主義を代表している。
そして、これまでファシズム、共産主義に勝利を収めてきた自由主義だが、虚無主義的なポストモダン段階に至った今、自由主義の終局は近いと語っている。
(Wikipedia引用)

ドゥーギン
ドゥーギン
「自由主義は自由とあらゆる形式の集合的アイデンティティからの解放を求める。これが自由主義の本質である。自由主義者は人間を国民というアイデンティティ、宗教というアイデンティティから解放した。そして最後に残った集合的アイデンティティがジェンダーである。いつか、自由主義はジェンダーを抹消し、性別を恣意的で選択できるものにするだろう」

米国を中心とした自由主義の終焉に対し、ドゥーギンが提唱する政治理論が「第四の政治理論」である。この理論の基礎は、個人、人種、国家にはない。ドゥーギンが依拠するのは、ナチスに協力したことで知られるドイツの哲学者マルティン・ハイデガーの哲学である。

これまでの主要な政治理論の主体として定められていたのは、自由主義では個人、共産主義では階級、ファシズムでは国家や人種だったが、第四の政治理論の主体はそのどれでもない、純粋な存在者である「ダーザイン」だという。一体どういうことだろうか?

ダーザインとは???

ダーザインとは日本語で「現存在」と訳されるハイデガーの哲学の主要コンセプトの1つであり、平たく言えば人間のことを意味しているのだが、ハイデガーはいかめしく「存在の意味が現れる場所」と規定している。著書『The Fourth Political Theory』で、ドゥーギンはこのダーザインを“純粋な存在者”であり、“本来的”だと指摘する一方、その反対にこれまたハイデガーの主要コンセプトの1つである「ダスマン」を対置している。ダスマンとは日本語で「世人」と訳されることが多く、誰とでも取替え可能で、”非本来的な“状態の人を指す。”生気のない人形“とドゥーギンは表現している。

さらに、ドゥーギンはハイデガーの哲学史観を要約し、古代ギリシア哲学から現代科学まで続くダーザインとダスマンの関係を語る。それによると、古代ギリシア人の哲学的焦点となった“存在”の問いは、純粋存在(存在すること)と存在の表現様態(存在するもの)を混同するようになってしまい、純粋存在が忘却されてしまったという。その頂点はプラトン哲学にあり、プラトンは純粋存在を忘れ、真理を人と存在するものの間に置くことで、真理の探究を存在の問いではなく、知識の問題にすり替えてしまった。そして、計算可能な「存在するモノ」の方が優位となったため、それが“計量的思考”を生み出し、科学技術の進歩を招いたという。この要約がハイデガーの意に沿うものかは分からないが、少なくともドゥーギンは、純粋存在を問うていたダーザインとしての人間が、プラトン哲学、そしてそれに続く科学技術の進歩により計量的思考、交換可能なモノのことしか考えず、自分自身もそのようなモノとして扱われるダスマンに堕してしまったと考えているようだ。

さらにドゥーギンは、ハイデガーが自由主義を嫌悪していたと指摘。

その理由は「(自由主義は)計量的思考の源泉だから」だという。ドゥーギンは詳しく解説していないが、おそらく次のようなことを意味しているのだろう。

計算可能なモノを取り扱う計量的思考は、人間を労働者としてモノ化してしまう資本主義を生み出した。そして、資本主義が生まれる土壌を提供したのが、個人主義、私的所有権、自由市場の基礎となった自由主義である。そのようにドゥーギンは言いたいのではないだろうか。ちなみに、海外メディア「Quartz」(2016年12月24日付)によれば、ドゥーギンの技術嫌悪は凄まじく、「インターネット、物理学、化学などの現代科学は全て破棄されるべき」と主張をしているという。

ドゥーギンの考えは、一方に「ダスマン・計量的思考・自由主義(アメリカ)・大西洋主義」を置き、もう一方に「ダーザイン・純粋存在・第四の政治理論(ロシア)・新ユーラシア主義」を置くという単純な対称を成しているようだ。

とはいえ、世界中の人々が本来的な生き方に目覚めたとしても、住む場所によって文化も違い、それぞれの個人の行き方を統一することは難しい。そこでドゥーギンが提唱するのが、アメリカ的な唯一の大権力ではなく、「多極的な権力」である。そして、ロシアは統一ユーラシアの主導国になることが望ましいとドゥーギンは考えているようだ。ここでドゥーギンが考えているユーラシアは、ほぼソビエト連邦の領土に依拠するが、どちらかといえば理想のロシアという趣きがある。

ドゥーギン
ドゥーギン
「西洋はロシアの本当の歴史を知らない。彼らは、ソビエト連邦が純粋に共産主義国家として誕生し、ウクライナ、カザフスタン、アゼルバイジャンといった国家はソ連以前には独立しており、ボリシェビキによって無理やりソ連に併合されたと考えている。事実は違う。これらの国家はそのようなものとして存在した試しはない。政治的・歴史的意味合いのない行政区分としてロシア帝国やソ連に存在しただけだ。これらの国家はソ連の崩壊後に人工的に国境が引かれたために結果的に生まれたに過ぎない」

この主張に則れば、ロシアのクリミア半島併合も正当化することができるだろう。ちなみにドゥーギンは、イラン、ドイツ、日本を地政学的に重視しており、日本については北方領土の返還も辞さない考えだという。

面白いことに、ドゥーギンの提唱する多極的な権力の並存は、プーチン大統領が撲滅を宣言しているイルミナティが掲げる「新世界秩序(NWO)」と真っ向から対立する。これにもドゥーギンの影響があったのかもしれない。

ここまでの話をおおざっぱに説明とすると

プーチンはイリンの思想を内政面で応用し、ドゥーギンの思想は外交面で利用していると考えられるだろう。外敵とフェイクニュースでロシア国民を操り、対外的にはロシアを中心にイラン・ドイツ・日本も含めた大きなユーラシア圏を形成し、アメリカやヨーロッパから成る大西洋主義に対抗できる国づくりを目指す……それがプーチン政治の青写真なのかもしれない。

まとめ

新ユーラシア主義を目指すため、今後もクリミア併合のような小規模な戦闘が繰り返され、独立国家共同体をロシアに組み込みつつ、徐々に理想的なユーラシア圏を形成していくのがセオリーだろう。そう考えると、アメリカとの戦争に今すぐ突入するとは考え辛いが、ロシアが重視するイランが核合意離脱で深刻な岐路に立つなど、厄介な事態が起こる可能性は十分にある。というのも、イリンとドゥーギンの思想には恐ろしい共通点があるからだ。イリンが「失われた純粋なロシア的精神」なるものを称揚しているように、ドゥーギンも「忘却された純粋存在」なるものを理論の中心に置いている。もしかしたらドゥーギンは認めないかもしれないが、純粋主義は純血主義に結びつき、容易にファシズムに繋がっていく。事実、イリンはファシストに熱狂し、ドゥーギンが依拠するハイデガーは一時ナチスの支援者だった。ドゥーギンはファシズムを乗り越えるものとして、第四の政治理論を基盤にした新ユーラシア主義を掲げているが、ファシズムへ傾斜していく危険性は十分にあるだろう。

そして、その中で日本の立ち位置もロシアの動き次第で大きく変わる可能性がある。
1つは、新ユーラシア主義の重要なパートナーとして、北方領土の返還も含め穏健な政治交渉が続けられていく道、

もう1つはロシアのファシズム化により日米ひとまとめに外敵と認識される可能性です。
最近、日本の外交相手としてニュースで見ることが少なくなったロシアだが、中国、韓国だけでなく、もう1つの隣国であるロシアの動きにも十分注意が必要のようです。

以上、参考になれば幸いです。